日本版DBSの導入フロー①

事業者が本制度(日本版DBS)の導入にあたって取り組むべき手順を、ガイドラインをもとにまとめました。

 事業者が法の施行前に、あらかじめ行うべきと考えられる事項(ガイドラインP235~236)

 各施設・事業における対象業務従事者の範囲を決める。

「対象業務従事者」とは、こどもに接する業務を行う者のうち、犯罪事実確認(犯歴確認)や安全確保措置の対象となる者の総称です。 ○原則として対象となるもの
 校長、園長、教諭、保育士、講師、指導員、 スクールカウンセラー、部活動指導員、放課後児童支援員 等

 内定取消事由や試用期間に係る解約事由として、「重要な経歴の詐称」を定めること

 犯歴確認は内定後等に行われるため、採用選考時に犯歴を秘匿した者への対処が課題となります。「重要な経歴の詐称」をあらかじめ事由に定めておくことで、虚偽申告があった場合に内定取消しや試用期間中の解雇を客観的に合理的、かつ社会通念上相当とする法的根拠になります。これを怠ると、判明後に対象業務から外す際の措置が権利濫用とみなされるリスクが高くなるため、規定の整備は不可欠です。

 就業規則において懲戒事由として次の内容を定めること

 懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則に懲戒の種類と事由を定め、周知しておく必要がります。本法に基づき「刑罰法規各規定に違反する行為が認められた場合」「企業秩序を乱した場合」を懲戒事由として明記しておくことで、事実判明時の処分に、客観的に合理的な理由と法的根拠を持たせ、権利濫用とみなされるリスクを回避できます。

<定めておくべき内容>
○重要な経歴の詐称
○「刑罰法規各規定に違反する行為が認められた場合」「企業秩序を乱した場合」等の一般的な刑罰法規違反・企業秩序義務違反
○「正当な理由なく業務上の指示・命令に従わなかったとき」等の一般的な業務命令違反
○「こども性暴力防止法上の「児童対象性暴力等」に該当する行為を行った時」、「児童対象性暴力等につながる不適切な行為を行った 時」

 就業規則及びその他服務規律等を定めた文書において、次の内容を定めること

 性暴力を未然に防ぐため、禁止される行為の範囲や報告義務を明確化し、従事者・児童・保護者の共通認識を形成して抑止力を高める必要がります。また、労働法制の観点から、特定性犯罪事実の秘匿や性暴力の実施を理由とした懲戒処分や配置転換を行うには、あらかじめ就業規則等にその根拠(種類や事由)を定め周知しておくことが不可欠です。規定がないと、事実判明時の措置が「権利濫用」として無効になるリスクがあります。

<定めておくべき内容>
・ 「児童対象性暴力等」及び「児童対象性暴力等につながる不適切な行為」の範囲
・ 教育や保育を提供する場においてこれらの行為を行ってはならないこと
・ これらの行為を行ったり、それを理由として刑罰を科されたりした場合は、速やかに報告すること

 採用募集要項の採用条件や内定時の誓約書の誓約事項として、特定性犯罪前科がないことを明示すること

 犯歴確認は内定後に行われるため、選考時に前科の有無を明示的に確認していない場合、判明後に「採用当時に知ることが期待できなかった事実」とみなされず、取消しの合理性が認められない恐れがあります。募集要項等への明示や誓約により、虚偽申告を「重要な経歴の詐称」として扱えるようにし、内定取消しや懲戒処分の法的根拠を明確にします。

 

  こども性暴力防止法の施行までに必要な対応>>>

 




今すぐ取り組むべきこと



 

 内部規程の整備(法的義務)


事業者は、性暴力を防止するための具体的な手順を定めた「児童対象性暴力等対処規程」を作成しなければなりません 。これには、疑いが生じた際の調査方法や被害児童の保護措置を含める必要があります。

□児童対象性暴力等対処規程に記載すべきこと


 認定事業者等が作成する「児童対象性暴力等対処規程」には、以下の6つの事項を必須記載事項としつつ、事業者の実態に応じた内容を盛り込む必要があります。

• 定義: 「児童対象性暴力等」および「不適切な行為」の定義を明記します。

• 実施体制の整備等:
◦ 不適切な行為の範囲の明確化、疑いを把握した際の報告ルールおよび対応ルールの設定。
◦ ルールに基づき事業者内で対応を行う責任者の指定。
◦ これらを従事者、児童等、保護者へ周知することの規定。

• 防止措置:
◦ 特定性犯罪事実該当者を原則として対象業務に従事させないこと。
◦ 被害の申出があった際の、被害児童等と加害が疑われる従事者の接触回避。
◦ 調査の結果、性暴力や重大な不適切な行為が認められた場合の業務従事制限。

• 事実確認のための調査の実施: 児童等の人権・特性への配慮、加害が疑われる者への公正・中立な対応、関係機関との連携手順などを定めます。

• 被害児童等の保護および支援: 加害者との接触回避、支援機関情報の提供、相談への真摯な対応など、児童等が日常を取り戻すための措置を規定します。

• 役割分担(共同認定の場合): 民間教育保育等事業者と事業運営者の間での具体的な役割分担を記載します。

 「児童対象性暴力等対処規定」については「不適切な行為」をどのように定めるかが最大のポイントです。ここでの記載内容がそのまま就業規則に禁止規定として明記されることになります。
 重要規定作成フロー 「児童対象性暴力等対処規定」→「就業規則」

 「児童対象性暴力等対処規定」は法に基づき”防止措置”として作成されるもので、この規定を根拠に懲戒処分を行うことはできません。

 なお、対象業務従事者を懲戒解雇するには、あらかじめ就業規則に懲戒事由を定め、周知しておく必要があります。

不適切な行為をどのようにして定めるか

「不適切な行為」の策定にあたっては、一律の基準を設けるのではなく、事業の実態や児童等の発達段階、現場の状況を考慮し、組織内で共通認識を形成していくプロセスが重要です。
具体的な定め方と留意点は下記のとおりです。


1. 「不適切な行為」の定義の理解


 まず、その行為自体は児童対象性暴力等に該当しないものの、「業務上必ずしも必要ではなく、継続・発展することで性暴力につながり得る行為」であることを前提とします。公私の区別が曖昧になったり、適切な距離感が失われたりするリスクを未然に防ぐことが目的です。

2. 策定の際に考慮すべき要素


事業内容や対象とするこどもの特性に応じて、範囲を柔軟に設定する必要があります。
• 発達段階・特性
 未就学児への着替え・排泄介助は業務上必要ですが、中高生に同様の行為をすることは不適切とされる可能性が高まります。
• 事業の特性
 スポーツやダンス指導など技芸の教授において身体接触が避けられない分野では、保護者の理解を得た範囲での接触をルール化します。
• 緊急性
 日常的な送迎と、災害や事故等の緊急時の対応は区別して考えます。

3. 具体的な策定プロセス


各事業者が独自のルールとして定める際には、以下の手順を踏むことが推奨されます。
• 現場とのコミュニケーション: 現場で業務を担う従事者と対話し、事業の実態に即して決定します。その際、従事者が過度に萎縮しないよう配慮が必要です。
• 慣習の見直し: 業界や組織内で「当たり前」とされてきた文化や慣習を、「児童等がどのように受け止めるか」という視点で改めて見直します。
• 専門家への相談: 必要に応じて外部の専門家の意見を採り入れます。
• 服務規律への反映: 定めた内容は、就業規則や服務規律、マニュアル等に明文化します。

4. 共通認識の形成と周知


ルールを定めるだけでなく、それが現場で機能するように以下の取組を組み合わせます。
• 議論の蓄積: 日々のミーティングや研修において、「どのような事案が不適切に当たるか」を繰り返し議論し、現場での認知や行動変容を促します。
• 三者への周知: 従事者だけでなく、児童等および保護者に対しても、事業者が定めた範囲を周知し、理解を得ておくことがトラブル防止に繋がります。
• 段階的な対応の活用: 初回かつ比較的軽微な行為については、直ちに罰するのではなく、なぜその行為に至ったかを聴き取り、改善を促すきっかけとして活用します。

5. 定めるべき行為の類型例


ガイドラインでは、以下の類型を具体例として挙げています。
• 私的な接触: SNSの交換、放課後の密会、保護者の承諾ない自宅訪問、二人きりでの車送迎など。
• 撮影・管理: 私物スマホでの撮影、業務外での写真・動画管理。
• 密室・身体接触: 不必要な密室化、不必要な長時間・不自然な抱擁、膝に乗せる行為、添い寝。
• 特別扱い: 特定の児童への高価な金品の授受、正当な理由ない態度の変化、容姿の過度な賞賛。
• その他: 従事者の過度な肌の露出(性的手なずけ=グルーミング防止)など。
このように、「不適切な行為」の策定は、組織全体で「こどもの権利」を再確認し、性暴力が発生しにくい環境を自律的に作り上げるための重要なプロセスとして位置付けられています

  教育・保育等を提供する事業者による児童対象性暴力等の防止等の取り組みを横断的に促進するための指針より

 上記指針における例示も参考に、従事者が過度に委縮することが無いよう留意しつつ、各事業所の実態に応じて明文化する必要があります。なお、就業規則上の懲戒事由については限定列挙となります。要は記載されたもの以外では懲戒解雇はできません。よって、就業規則に「児童対象性暴力等につながりえる不適切な行為」を記載した最後に、「その他前各号に準ずる児童対象性暴力等につながりえる不適切な行」との一文を明記しておきます。

 「児童対象性暴力等対処規程」に定めた事項や、事業者が独自に定める「不適切な行為」の範囲については、保護者に対して周知することが義務付けられています。 よって、あまりに凝った(詳細な)内容とした場合、思わぬところで想像以上の負担を強いられる事態が考えられます。





 事業者が、求職者・現職者(※1)等に対し、あらかじめ確認・伝達を行っておくべき事項

【確認事項】
・ 求職者の特定性犯罪前科の有無(※2・3)

【事前伝達等事項】
・ 制度の趣旨・目的、各施設・事業における対象業務従事者の範囲、個人情報の管理は徹底されること
・ 施行時・認定時又は採用内定後等に、犯罪事実確認の対象となること及び申請従事者から国に対して戸籍等の提出を行う必要が あること(※2)
・ 犯罪事実確認の結果、特定性犯罪事実該当者であることが確認された場合又は戸籍等の提出が行われず、法定の期限までに犯罪 事実確認書の交付が行われない場合には、対象業務に従事させることができないこと(※2)
・ 内定取消し事由や試用期間に係る解約事由として、「重要な経歴の詐称」を定めていること
・ 就業規則に定める重要な経歴の詐称・刑罰法規違反・企業秩序義務違反・業務命令違反等の懲戒事由に該当する場合は、懲戒処 分の対象になり得ること。特に、「児童対象性暴力等」及び「児童対象性暴力等につながる不適切な行為」はこども性暴力防止 法の趣旨や規定に反する行為であり、厳格な懲戒処分の対象になり得ること
・ その他、採用募集要項の採用条件や内定時の誓約書、関連する服務規律等を定めた文書等の内容(※2)

※1 現職者は、施行時・認定時に法の対象となる業務に従事している(又は配置転換によって従事し得る)者を指す。
※2 書面等で確認・伝達等すること(求職者に対しては採用面接等を通して確認・伝達等することが望ましい。)
※3 求職者に対してのみ実施すべき事項

「日本版DBS」施行に伴い、子どもに関わる事業者様には、スタッフの性犯罪歴の確認だけでなく、適切な人事管理が求められます。

「もし犯罪事実が判明したら、即座に解雇できるのか?」
「待機期間中の処遇はどうすべきか?」

 こうした法的なリスクを回避するためには、日本版DBSに準拠した就業規則の整備が不可欠です。当事務所では、最新の法改正に基づき、貴園・貴校の実情に合わせた規定案の作成をサポートいたします。

 

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